インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントとは
病気は患者さん自身の重大な問題ですから、この病気について知り、またこれに関わる検査や治療法を決定する権利は患者さん自身にあります。しかし、決定する権利があると言っても、病気やこれを診断するための方法、治療の内容は大変複雑ですので、突然病気を患った患者さんがこれらを正しく理解して、ご自分で判断、決定することは容易ではありません。このため、患者さんが正しい情報に基づいて、ご自分の病気や検査、治療の内容を十分に理解し、その上で判断、決定ができるよう、医療チーム(医師、看護師、薬剤師など)が病気とその検査や治療について、わかりやすく説明する必要がある訳です。このように、医療チームが病気や検査や治療についての正しい情報を患者さんに提供し、患者さんがこれらを正しく理解した上で、ご自分が受ける医療の内容を決定する過程をインフォームド・コンセントと呼びます。これにより、患者さんは、患っている病気がどのようなものなのか、検査や治療にはどのようなものがあり、何故必要なのか、効果はどうなのか、副作用はどうなのか、治療しない場合にはどうなるのか、といったことを何でも自由に納得がいくまで質問し説明を受け、その上で検査や治療を選択したり,同意したり,拒否したりすることができます。

インフォームド・コンセントは"説明と同意"という訳語が使われることもありますが、単なる説明ではなく、「十分に理解、納得して」という意味が含まれるため、近年は"インフォームド・コンセント"と表記されることが多くなっています。英語では"informed consent"という言葉のほかに、"informed decision" ,"informed choice", "shared decision"という呼び方も使われています。

インフォームド・コンセントの歴史

1946年,第二次世界大戦中のナチスの非人道的な人体実験に対してニュルンベルグ裁判が行われたのをうけて,1949年に医学研究の対象となる患者さんの人権に言及した「ニュルンベルグ倫理綱領」が採択されました。

1964年,世界医師会は医学研究にかかわる患者さんの人権擁護を目的とした「ヘルシンキ宣言」を採択し、1975年には,インフォームド・コンセントが不可欠であると明確にした改正案が採択されました。この「ヘルシンキ宣言」は,その後数回にわたって改正が行われていますが,医学研究だけではなく医療行為全般にわたる倫理的指針として用いられています。

1978年,世界保健機構(WHO)は,患者さんは自分の医療の計画と実施に参加する権利があるとする「アルマ・アタ宣言」を採択しました。さらに、 1981年,世界医師会は「患者の権利に関するリスボン宣言」を採択しました。これらを踏まえて,諸外国で,インフォームド・コンセントを含む”患者の権利”が立法化にむかっています。

日本では,1980年代後半ころからインフォームド・コンセントの概念が用いられるようになり,1990年に日本医師会の生命倫理懇談会より「「説明と同意」についての報告」が公表されました。1997年,医療法の改正が行われ,インフォームド・コンセントが医療者の努力義務として盛り込まれました。